普段、ほとんどこのような解説はしていませんが、それは画像で色を説明してもデバイスの機種により再現される色が正確ではないことで、見ている皆さんが勘違いしてしまうと逆に問題が発生するというプロとしての私の美学があるからなのですが、たまには、どのような判断基準で私が商品を観察しているかを説明する機会をもつか…ということで、今回はなかなかない青と茶色の商品を、イエローベース、ブルーベースどちらに判断するかという解説をしてみます。
微妙に水色の色味が左右で違うが、どちらもイエローベースになる理由は…
私はこのような補色配色（色相環上、180度相対する位置関係の組合わせ）が大好きです。純色で合わせてしまうとギラギラして目が痛いような組合わせなのですが、トーンが鈍くなってくると絶妙な洒落度のコントラストになるのがこの関係です。
左のネクタイは、コーヒーブラウン（Au）＋生成り（Au）＋ターコイズ（Au）
右のネクタイは、テラカッタ（Au）＋ライトアクア（Sp）＋ミディアムターコイズ（Sp）
こうやって因子分解すると、左はオータム用、右はスプリング用と判断することになると思います。でも、右のネクタイの面積でオータムのテラカッタの部分の面積は全体の50％ほどになるので、オータムが使っても無理がないものとなります。つまり、オータムがちょっと華やか気味にしたい場合に使うととても良いと言うことです。逆にスプリングが少し想い迫力を付けたい場合にも良いということになります。この場合に、スプリングはスプリングらしい、暗くなりすぎないYシャツ（ペールアプリコット等）の色を選択することが重要となり、オータムならグレードイエローグリーン（薄いグレイッシュなカーキ）のYシャツにすると、もの凄くオシャレになります。
左のネクタイは、全てオータムらしい配色になっていますので、オータムの華やかな印象を作りやすいネクタイですが、これをスプリングが使えない訳ではありません。そこが補色配色のインパクトの素晴らしさで、もともと華やかな配色であることで、地味に見えないマジックが働くので、クリーム色のYシャツやペールイエローグリーンのYシャツに合わせると大胆でシックなスプリングが出来上がります。 このように、補色配色はそれだけ見せ方によって化ける範囲を広く持っているとも言えるのです。
水色、茶色がギリギリどちらもブルーベースという珍しいスカートは、サテンの光沢感で判断しにくい
なかなか微妙な商品だなぁ～と見ていたスカートです。光っている分、色がブルーベースに見えにくいと思います。が、この写真を撮ったのは、希有でかなり珍しかったからです。そうはいっても茶色がブルーベースの赤が濃くなった茶色で、純色に戻した時にオレンジにならない色なのです。そして水色もアクアではなくスカイブルーの範疇に入る色なので、この商品はあくまでもぶるーベースだけで構成されたものです。つまり、サマーに所属するものになります。 が、サマーは基本が優美でエレガントなので補色配色の商品は殆ど存在しないのが実状です。常識的に言って、サマーの色を見たときに、デザイナーも補色配色したいとはあまり思わないという一般的な感覚があるはずです。
市場には殆ど存在しにくい組合わせの商品があったので、私は感動したのです。ハイブランドならあり得るのですが、一般の売り場では、売りにくい色なので生まれてこない…といっても過言ではありません。難しいと感じる人が多いでしょうから売れ残る確率も高いです。私自身がブルーが苦手でなければ着てみたくなる配色です。柄が大きいのもサマーではなかなか無いのが実状です。きっとこのデザイナーは、この商品を少し大胆だけどエレガントさを失わない華やかさとして作ったのだろうな…と妄想しました。
このスカートを綺麗に着るなら、ココア色の透け感のあるブラウスと合わせるとシックな大人綺麗な印象だと思います。爽やかに着るならペールレモンイエロー、鈍いブルーグレイのカットソーだと大人っぽいカジュアル感が出せますね。ラメ入りのローズブラウンのハイゲージニットなら色っぽい大人女性になると思います。
アーティスティクなぼかし染めのジップアップブルゾンは複雑な色構成でベースがわかりにくい
さて、このような商品を何処のシーズンと見るのかが悩むところだと思います。因子分解すると… こんな感じです。
茶色 →マホガニー（AU）
青の濃い所 → SuのグレーブルーにAuの黄色を足した色なのでAuの範疇になる
水色 → Spのライトアクアのくすんだ色 →くすんだことでAuになる
黄色 → Auのイエローゴールド
つまり、何だかんだでオータムの色で構成されています。この商品は、メンズですが、実際にオータムのお客様にパンツを購入頂いたものです。その方も、自分がこのような色と柄が似合うとは思っていらっしゃらなかったので驚いていましたが、実際に着てみると「アラ不思議！」違和感なく格好良かったです！
「イヤイヤ、これは着れないでしょ！」 と言われがちな商品ですが、オータムはこのような芸術的香りのものを着こなす能力は結構アルのです。 これ、小栗旬さんとか似合いそうだと思いません？ 私がオータムな是非着たい！と思うものですね。無い物ねだりですが。
このように、色は複雑で様々なポジションから私達にその美しさと精妙さを投げかけてくれます。あるものに惹かれうなら、どうしてそうなっているかを考えることで、あなたの望んでいる何かがそこにあるかもしてません。私はそうやって色を自分の鏡に使っていると思っています。だから、鏡を大切に思っています。
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